【現役介護福祉士が語る】90代女性との出会いから考える
「心のケア」と多職種連携の重要性
こんにちは、介護福祉士のnaoです。
私は12年以上特別養護老人ホームで勤務し、現在は訪問介護の現場で日々利用者様と向き合っています。介護の仕事は、利用者様の人生に深く関わる奥深いものです。
今日の訪問では、ある90代の女性の利用者様との出会いを通じて、私たち介護職が提供できる「個別ケア」の重要性と、それに伴う多職種連携の必要性について深く考えるきっかけとなりました。
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〇〇さんの変化に気づく:かつての笑顔と現在の状況
今回訪問したのは、90代の〇〇さん。お一人暮らしをされています。かつては明るく、お菓子やご飯を「むしゃむしゃ」と召し上がり、たくさんの笑顔を見せてくださる方でした。ご家族とは離れて暮らしており、会う機会はないそうです。
現在は糖尿病と高血圧の管理が必要で、週3回デイサービスに通いながら、その他の曜日に訪問介護を利用されています。私たちが訪問する日の支援内容は、血圧と血糖値の測定確認、インスリンの単位確認、居室の掃除、そして服薬のチェックといった、日々の健康管理と生活援助が中心です。
私たちは、これらの支援を単なる業務としてこなすのではなく、その中に隠された小さな変化やサインを見逃さないように努めています。例えば、バイタルサインの変動や内服状況から、体調の変化だけでなく、生活リズムの乱れや認知機能の変化を読み取ることができるからです。今日の訪問でも、淡々とした支援の中に、以前とは異なる〇〇さんの様子が見受けられました。
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「外に出なくなったわけ」から読み解くサイン:生活機能低下と認知症の兆候
そんな中、最近の〇〇さんの表情が以前よりも乏しくなってきたことに気づきました。以前は近くに住むお友達と会話を楽しんでいらっしゃったそうですが、その方が亡くなってから外出もしなくなったとのこと。
私は、訪問時の短い時間の中でも、〇〇さんの変化に心を留めていました。特に、お掃除を終えて帰ろうとした時、背中を丸め、どこか遠くを見つめる〇〇さんの姿が目に焼き付きました。その「寂しげな背中」は、身体的な支援だけでは満たされない「心のケア」の必要性を強く物語っていました。
これは、高齢者によく見られる「生活不活発病(廃用症候群)」のリスク因子です。活動量の低下は、身体機能の衰えだけでなく、認知機能の低下やうつ状態を引き起こす可能性があります。さらに、服薬の忘れが目立つようになったことも、重要なサインです。これは、認知症の進行を示唆している可能性があり、服薬管理は命に関わるため、特に注意が必要です。
私たち介護職は、利用者様の生活機能全体をアセスメントし、身体面だけでなく精神面、社会面も含めた総合的な視点を持つことが求められます。
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サービスの形も変わっていく:多職種連携と地域包括ケアシステムの活用
訪問介護は、単に身体介護や生活援助を行うだけでなく、利用者様の心の動きにも寄り添っていく仕事です。現在のサービス内容が〇〇さんにとって十分なのか、私たちは常に問い続ける必要があります。
このような状況で最も重要なのは、ケアマネジャーとの密な連携です。今日の訪問で気づいた〇〇さんの表情の変化、外出頻度の減少、服薬忘れといった具体的な情報を速やかにケアマネジャーに共有しました。これにより、ケアマネジャーは利用者様のニーズを包括的に把握し、ケアプランの見直しを検討することができます。
訪問介護だけで補いきれない部分は、他のサービスとの連携も視野に入れるべきです。例えば、地域のサロン活動や高齢者向けの交流会への参加を促したり、地域包括支援センターの活用を検討したりすることも有効です。そこには、地域の社会資源に関する情報が集まっており、新たな社会参加の機会へと繋がる可能性があります。
私たちの役割は、その人にとって「ちょうどよい」支援を届けることです。それは、単に困り事を解決するだけでなく、その人らしい生活を支え、希望を引き出すことでもあります。
介護の現場には、毎日さまざまなドラマがあります。私たち介護職は、目の前の利用者様の「今」だけでなく、「これから」を共に創っていくパートナーとして、その人らしい人生を支えるために日々学び、成長し続けることが求められています。
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【免責事項】
この記事は、介護の現場での経験や一般的な情報に基づいて作成されています。医学的な診断や特定の症状の治療を目的としたものではありません。
記事中に記載されている体調や症状に関する情報は、あくまで一般的な知識として参考にしてください。個別の症状や体調不良については、必ず医師や専門家にご相談ください。
記事の内容によって生じたいかなる損害についても、当ブログでは責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
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