介護をされているご家族の皆さん、毎日本当にお疲れ様です。
大切なご家族のために、日々奮闘されていることと思います。その中で、体力的な疲れ、精神的なストレス、そして「自分の時間がない」と感じるお悩みは、決して少なくありません。
介護現場で働く私たち介護福祉士は、専門職として利用者様に関わる傍ら、その側で献身的に支えるご家族の姿を拝見しています。そして、皆さんが抱えるこれらの深刻な悩みについても、日々の関わりの中で痛感しています。
今回は、良く相談される悩み15選の中から3つの悩みをピックアップし、私たち介護福祉士の視点から少しでも心が軽くなり、明日への力になるようなアドバイスを送らせていただきます。
体力的な負担(介護による疲労)について
「介助で腰を痛めそう…」「夜間対応が続いて寝不足でフラフラ…」
このようなお悩み、本当に切実だと思います。排泄介助やおむつ交換、体位変換、移動の介助など、身体を使うケアは想像以上に体力を消耗します。特に夜間は、介護者さんご自身の休息時間であるにも関わらず、対応が必要になることも多く、慢性的な疲労につながりやすいです。
私たち介護福祉士は、これらの介助を安全に行うための専門的な技術を学びます。例えば、ボディメカニクスという人間の体の構造に基づいた介助法を使い、自分の体への負担を減らしつつ、相手にも負担をかけないように工夫しています。
【介護福祉士からのアドバイス】
- **正しい介助方法を学びましょう:** 自己流の介助は、介護される側にも介護する側にも負担がかかります。地域の介護教室や、担当のケアマネジャーさんを通じて、訪問介護事業所の介護福祉士などに正しい体位変換や移乗の方法を教わってみてください。少しのコツで、体の負担は大きく変わります。
- **福祉用具の活用を検討しましょう:** 専門家(ケアマネジャーや福祉用具専門相談員)に相談し、体の状態や住宅環境に合った福祉用具(手すり、歩行器、電動ベッド、移乗用リフトなど)の導入を検討しましょう。これらを活用することで、介助者の負担を大幅に軽減できます。
- **自分の体からのサインを見逃さないで:** 腰痛や肩こり、体のダルさなど、疲労のサインが出たら無理は禁物です。休憩を挟む、ストレッチをするなど、意識的に体をケアする時間を作りましょう。
精神的な負担(ストレス・不安)について
「この先どうなるんだろう…」「ちゃんと介護できているか不安…」
先の見えない状況での介護、責任感、そして孤独感からくる精神的な負担は、体力的な負担以上に辛く感じることもあります。「家族介護者の約8割が何らかのストレスを感じている」という調査結果は、多くのご家族が同じように悩んでいることの現れです。精神的な疲弊は、介護の質にも影響を与えかねません。
私たち介護福祉士も、仕事の中で責任や難しさを感じることがあります。そんな時、同僚と悩みを共有したり、先輩に相談したりすることで、気持ちを整理し、また前を向くことができます。専門職でも一人で抱え込むのは難しいのです。
【介護福祉士からのアドバイス】
- **感情を認め、受け止めましょう:** 「疲れた」「もう嫌だ」と感じてしまうのは、決して悪いことではありません。それは一生懸命介護に向き合っている証拠です。自分の素直な感情を否定せず、「今、自分はこう感じているんだな」と受け止めることから始めましょう。
- **誰かに話を聞いてもらいましょう:** 友人や親族に話すだけでも、気持ちが楽になることがあります。また、地域の相談窓口や、ケアマネジャーさん、私たち介護福祉士も、皆さんの悩みを聞く準備ができています。遠慮なく「辛い気持ちを聞いてほしい」と伝えてください。
- **完璧を目指さないで:** 介護に「正解」はありませんし、ロボットのように完璧なケアを続けることは不可能です。「今日はこれだけできれば十分」と、自分に優しく、ハードルを少し下げてみましょう。
- **家族の会などに参加してみる:** 同じような悩みを抱える人たちの集まりに参加することで、共感を得られたり、役立つ情報を交換できたりすることがあります。
自分の時間が持てないについて
「趣味や友達との付き合いがなくなってしまった…」「ゆっくり休む時間がない…」
介護中心の生活になると、どうしてもご自身のことは後回しになりがちです。介護者自身の生活や人生が犠牲になってしまう状況は、非常に深刻な問題です。心身のリフレッシュができなければ、介護を長く続けていくことは難しくなってしまいます。
私たち介護福祉士は、シフト制で勤務したり、休暇を取ったりしながら仕事を続けています。これは、自分自身の休息やリフレッシュの時間が、より良いケアを提供するために不可欠であることを知っているからです。ご家族の皆さんにも、プロの介護者と同じように、休息は必要不可欠なのです。
【介護福祉士からのアドバイス】
- **「自分の時間」を意識的にスケジュールに入れましょう:** たとえ短時間でも構いません。「〇曜日の〇時から〇時までは自分の好きなことをする」と決め、カレンダーに書き込んでみましょう。介護のタスクと同じくらい、ご自身の時間も大切な予定として扱ってください。
- **レスパイトケアを活用しましょう:** 介護保険サービスには、介護者が休息を取るためのサービスがあります。
- **ショートステイ(短期入所生活介護):** 施設に一時的に宿泊するサービスです。数日から数週間利用でき、介護者さんはこの間に心身を休めることができます。
- **デイサービス(通所介護):** 日中、施設で過ごすサービスです。介護者さんは日中の時間を自由に使うことができます。
- **訪問介護:** ヘルパーが自宅に来て、ケアを行います。介護者さんはその間、買い物に出かけたり、少し横になったりする時間を持つことができます。
- これらのサービス利用は、決して「楽をしている」「サボり」ではありません。継続して介護を行うために、そしてご自身の健康を守るために、非常に重要な選択肢です。
- **家族で役割分担を話し合う:** 可能な範囲で構いませんので、他のご家族と協力体制を話し合い、少しでも一人にかかる負担を減らす方法を模索してみましょう。
最後に
介護は、終わりが見えにくいマラソンのようなものです。一人で走り続けようとすると、途中で息切れしてしまったり、怪我をしてしまったりするかもしれません。
周りを見渡し、利用できるサービスや人の手を借りることは、決して恥ずかしいことでも、申し訳ないことでもありません。むしろ、賢くサービスを活用し、自分の心と体を大切にすることこそが、結果として大切なご家族を長く、穏やかにケアしていくための一番の近道なのです。
もし今、この記事を読んで「辛いな」「どうしたらいいんだろう」と感じているなら、まずは担当のケアマネジャーさんや、地域の包括支援センター、相談窓口に連絡してみてください。私たち介護福祉士をはじめ、様々な専門職が皆さんをサポートしたいと思っています。
皆さんは一人ではありません。専門職を頼り、社会の資源を活用しながら、どうかご自身のことも大切にしてください。心から応援しています。
【免責事項】
この記事は、介護の現場での経験や一般的な情報に基づいて作成されています。医学的な診断や特定の症状の治療を目的としたものではありません。
記事中に記載されている体調や症状に関する情報は、あくまで一般的な知識として参考にしてください。個別の症状や体調不良については、必ず医師や専門家にご相談ください。
記事の内容によって生じたいかなる損害についても、当ブログでは責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
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